2022年に入って、DAO(ダオ)という言葉を目にする機会が増えたのではないでしょうか。DAOとは、Web3.0時代の新しい組織の形です。
日本語にすると自律分散型組織で、その名のとおり管理者が不在で、自律的かつ権限を分散した形で運営されています。
とはいえ、いまいちピンとこないですよね。
そこでこの記事では、初心者向けに以下について分かりやすく解説していきます。
- 株式会社との違い
- DAOの特徴や仕組み
- 代表的なDAOの事例
- DAOの課題や未来
この記事を読めば、DAOへの理解が深まるとともに、未来の働き方に期待が膨らむこと間違いなしです。
DAO(自律分散型組織)とは?
DAOとは「Decentralized Autonomous Organization 」の略称で、日本語にすると「自律分散型組織」。ブロックチェーン技術の発展により生まれた「新しい組織形態」です。
中央管理者(リーダーや社長)が存在しておらず、全ての組織メンバーが権限を持ちながら、プログラムによって自律的に運営されています。
現在は、会社と雇用契約を結んで働くのが一般的ですが、DAOが発展していけば、働き方が大きく変わるかもしれません。
イメージが湧きづらいと思うので、株式会社との違いを見ていきましょう。
株式会社との違い
株式会社 |
DAO |
|
中央管理者 |
社長 |
スマートコントラクト(プログラム) |
組織形態 |
ピラミッド型 |
フラット型 |
意思決定 |
トップダウン |
メンバーによる投票 |
報酬 |
一定額(役員報酬、給与) |
DAOへの貢献度により変動 |
株式会社では、人間が経営しているため、個人の利益を優先してしまったり、不正が発生してしまう可能性が高いです。
一方でDAOは、プログラムによって管理されているので、不正が発生する可能性は極めて低いと言えます。
株式会社との違いが理解できたところで、次に、DAOの仕組みを見ていきましょう。
DAOの仕組み
DAOは、以下の仕組みによって成り立っています。
- スマートコントラクト
- ガバナンストークン
- フラット型の組織
順番に見ていきましょう。
スマートコントラクト
スマートコントラクトは「ブロックチェーン上で契約や取引を自動的に実行する仕組み(プログラム)」のことです。
>>そもそもブロックチェーンとは?基本的な仕組みの話
例えば自動販売機は、以下のように一定の動作をすると、人がいなくても自動的に飲み物を購入できますよね。
- お金を入れる
- ボタンを押す
- 飲み物が出てくる
DAOは、スマートコントラクトによって、リーダー不要かつ人間の感情に左右されない公平な運営を可能にしています。
ガバナンストークン
ガバナンストークンは、投票権を持った仮想通貨(NFT)のこと。
DAOでは、組織のルールやプロジェクトの方向性を決める際、トップダウンで決めることはありません。
メンバーが保有するガバナンストークンを用いて、選挙のように投票することで、意思決定を行います。
なお、ガバナンストークンは、DAOへの貢献度に応じて配分割合が決定することが多いです。
フラット型の組織
DAOは、従来のピラミッド型の組織と比較して、フラット型の組織だと言えます。
株式会社のようなピラミッド型組織だと、トップダウンで意思決定がなされ、それに従う必要がありました。
そのため、権力に支配されることなく、公平な意識決定が可能。
また、全ての組織メンバーが権限を持っているため、提案の内容さえ良ければ、誰の案でも採用されます。
DAOの特徴
DAOの特徴としては、以下の3つが挙げられます。
- 中央管理者が不在
- 高い透明性と公平性
- 誰でも匿名で参加可能
順番に見ていきましょう。
中央管理者が不在
DAOは、中央管理者(社長)が不在で、スマートコントラクトがその役目を担っています。
株式会社であれば、基本的に社長が社員に対して仕事の指示を行い、その内容に従って働きます。
具体的には以下のとおり。
- 誰かがプロジェクトを提案
- ガバナンストークンによる投票を行い、スマートコントラクトによって実施の有無を決定
- チームまたは個人単位でプロジェクトを進めていく
上記のように、DAOは中央管理者が不在ですが、スマートコントラクトによって組織が成り立っているのです。
高い透明性と公平性
ブロックチェーンは、取引履歴などの情報を分散管理する仕組み。その内容は誰でも閲覧可能で、不正や改ざんを行うことは極めて困難です。
DAOは、ブロックチェーン上のスマートコントラクトに基づいて運営されているため、すべての情報が公開されています。
また、DAOの意思決定は、ガバナンストークンによる投票で行われるため、権力に左右されない公平な組織運営を実現しています。
誰でも匿名で参加可能
DAOは、基本的に匿名かつアイコンだけで参加可能。国籍、性別、年齢など一切関係なく、実力や熱意さえあれば、誰でもメンバーになれます。
また、中央管理者が存在せず、スマートコントラクトによって自律的に運営されているため、会社と異なり雇用契約も存在しません。
DAOであれば、自分が本当に実現したい、または興味があることに挑戦できるため、誰もがモチベーション高く仕事に取り組めるかもしれません。
代表的なDAOの事例
代表的なDAOの事例として、以下の3つが挙げられます。
- ビットコイン
- NounsDAO
- MakerDAO
それぞれについて、詳しくは以下の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
>>【DAO(自律分散型組織)の海外・日本国内の6つの事例】GameFiやNFT分野で次々と発足!
日本国内のDAOの事例
国内で有名なDAOは以下の3つです。
- MZDAO
- NinjaDAO
- 和組DAO
それぞれについて、詳しくは以下の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
>>【DAO(自律分散型組織)の海外・日本国内の6つの事例】GameFiやNFT分野で次々と発足!
DAOの課題・問題点
DAOはブロックチェーン上のスマートコントラクトに基づいて運営されており、自律・分散的な組織だと解説してきました。
しかし、そんなDAOにも、以下のような課題・問題点が存在します。
- ハッキングのリスク
- 柔軟な意思決定ができない
- 法整備が未発達
それぞれ見ていきましょう。
ハッキングのリスク
DAOは、ブロックチェーン上のプログラムによって管理されているため、コードにバグがあった場合、ハッキングされてしまう可能性があります。
2016年には、世界初のDAOと言われる「The DAO」がハッキングされ、約52億円相当のイーサリアムが盗まれる事件が発生しました。 |
The DAOは、運営メンバーの投票で投資先を決定する投資ファンド。プログラムの欠陥を見抜いたハッカーにより、多額の投資資金を盗まれてしまいました。
このように、DAOはプログラムに基づいて運営されているため、ハッキングの可能性があることを覚えておきましょう。
柔軟な意思決定ができない
DAOの意思決定は、コミュニティ内の話し合いや提案があった後、投票によって決まります。権力者がトップダウンで意思決定を行わないため、民主主義的にものごとが進みます。
しかし、DAOの規模が大きくなればなるほど、話し合いや投票に時間を要する可能性が。
そのためDAOは、公平性は高いものの、意思決定のスピードが低下したり、柔軟に方針を変更したりすることが難しいといった課題があります。
法整備が未発達
DAOは新しい組織形態なので、日本を含め世界中で法整備が未発達です。
例えば、DAOの権限は分散化されているため、何か問題が発生した際に、責任をとる存在がいません。 |
一方で株式会社であれば、最終的に社長が全ての責任を負うため、不祥事が発生した際には退任することも多いですよね。
また、DAOは特定の誰かのものではなく、メンバー全員によって分散管理されています。
国籍問わず誰でも参加可能なので、収益にかかる税金は、どこの国の法律に基づいて、どのような形式で支払うのでしょうか。 |
以上のように、法整備が未発達なことでさまざまな懸念があります。
なお、米国ワイオミング州では、2021年のDAOを法人化する法案が可決されるなど、世界中で少しずつ法整備が進んでいることも事実です。
>>米ワイオミング州、自律分散型組織(DAO)の法人化を認める法案を提出
DAOの未来
DAOが当たり前になった世界では、何が起こるのでしょうか。
株式会社が完全になくなることは、現状では考えられませんが、新たな働き方としてDAOを選択する人が増えるのは間違いありません。
DAOは、個人の裁量で自由に働くことが可能なので、仕事に対する意識が大きく変化する可能性が高いです。
- 誰でも匿名で参加可能
- 貢献度に応じて適切に報酬が支払われる
- 自由に参加・脱退可能で、複数のDAOを掛け持ちすることも当たり前
筆者の考えですが、DAOの発展により、多くの人の考え方が「ライスワーク」から「ライフワーク」へと変化すると予想しています。
※ライスワーク:生活やご飯のために働くこと。モチベーションは低い。 ※ライフワーク:仕事とプライベートは分かれておらず、自身の使命や生きがいを仕事にすること。モチベーションが高い。 |
もしそうなれば、現在のストレス社会から一変して、自分のやりたいことに夢中になれる人や幸福な人が増えるかもしれませんね。
新しいことや技術に対しては、必ず賛成派と反対派が生まれるものです。しかし、技術発展や人類の進化が止まることはありませんので、ワクワクしながら、DAOの未来を一緒に想像しましょう。
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